Q2.婚姻費用分担請求(生活費請求)について

夫婦トラブル解決のための法律Q&A

 Q.02 「夫が生活費をくれません…」

生活費をもらう方法は「婚費分担請求の調停」の申し立てです。

夫が生活費を出すことは、民法上の扶助義務の観点からも、生活費を出さないということ自体に慰謝料請求もできる「悪意の遺棄」の一つとして、法定離婚原因にも上げられる義務行為です。
生活費(法律事務的には生活費のことを「婚姻費用婚費)…こんいんひよう(略称:こんぴ)」と言います)を請求するのは当然の行為です。

夫婦はお互いが等しく生活する権利を有していると考えられ、一方が不当な扱いを受けることがあってはいけません。生活費を出すことは「義務」です。
特に専業主婦であれば、自分が家庭のことや子育てをして夫を支える立場であることを夫も了承しているはずですから、生活費を出さないということは、妻や子供を養うつもりがないということで、民法上は犯罪行為にも等しいわけです。

ただ、妻の方が稼ぎも良いという夫婦もありますので、絶対に夫側だけが負担しなければならないということではありません。
しかし、ほとんどの場合は、浮気の挙句、妻を切り捨てようと「いやがらせ」で生活費を出さないケースが多いので、これは夫側の不法行為の上での行動ですので、妻側はしっかり要求していくことが大事です。
また、離婚問題に至っていない夫婦の場合は、夫がギャンブルや趣味(飲みに行くなど)にお金を自由に使いたいからであり、これも扶助義務から大きく逸脱した行為ですので、当然請求できます。

生活費を払わない夫という問題が出てくると、それはすなわち夫に浮気相手がいて、妻子にお金をいれなくなるというケースが多いので、こういった対処法があるわけですので、基本的には「婚姻費用」を争う場合は、離婚が前提となることがほとんどです。

では、どのように請求していけば良いのか?

これは、家庭裁判所に「婚姻費用の分担請求調停」を申し立てるのです。

調停の費用は2千円以内ですし、弁護士も必要ありません。夫と妻が交互に調停室に入り(調停中の協議に入ればは基本的には顔を合わせません)、調停委員さんに意見を述べ、夫側が合意すればすぐに生活費は再開されます。
1回で合意しないことがほとんどですので、月1回2時間程度のペースで数回開かれます。

もしも、夫が調停で拒否をすれば、婚姻費用分担の調停は必ず審判に移行し(乙類調停事件のため)、裁判官によって審判決定が言い渡されます。
審判になれば、必ず生活費(婚費)を負担するように命令されますので、夫は速やかにお金を渡す必要があります。

ただ、この申し立ては一般的に、浮気をして家庭にお金をいれなくなった夫との離婚協議中に離婚が成立するまで(数か月~数年)の生活費を払ってもらうことに使用する手法なので、全く離婚するつもりがない方の場合は家庭内で空気が悪くなるのは明らかなので、そこは覚悟しましょう…。


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自分がいくらの婚姻費用をもらえるかの概算がわかりますよ(義務者が夫、権利者が自分)。

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生活費が滞っていてすぐにでも貰わないと生活が成り立たないというピンチのケースでは、調停ではなく、「婚姻費用の分担請求の審判」から申し立てることです!
審判であれば、調停で協議するよりもずっと早く審判決定が出されます。
本当にピンチの時は調停ではなく、審判の申し立てから!(「付調停」といって、審判を申し立てても一旦調停から始められる可能性もあるのですが、申立人の主張通り合意できそうにないとなればすぐに審判に切り替えてもらいやすくなります)。

一般的には離婚後の子供の養育費よりも、婚姻中の婚姻費用分担の方が金額が多いので、離婚の危機にある方は簡単に離婚を選ばずに、婚姻費用分担を受け続けながら今の生活を続けましょう。
時間をかければかけるほど、逆に夫へのプッシャーになります。

粘り勝ちとなるように、充分に時間をかけてください。
最低1年、できれば2~3年は粘って構いません。その間に浮気相手と別れるかもしれないし、離婚できないことに業を煮やした夫が解決金(慰謝料と言うと言葉がキツいので、離婚時は「慰謝料」を求めるよりも、「離婚解決金」という名称で要求するのが相手を刺激しないコツ)の支払いを自ら提示してくるかもしれません。

もしも、裁判所の命令を無視することがあれば、裁判所から再度勧告されますし、それでもダメであれば給与支払い先(夫の会社)に対し、強制執行をかけて給料からの天引きも可能です。

しかし、調停での合意とは言っても、調停内でなんとなくの合意をしてはいけません。必ず家裁に「調停調書」を発行してもらってください。それがないと口約束で終わってしまい、調停の意味がなくなります。調書の内容もしっかり確認して、後で後悔しないようにしてください。

当然のことながら、離婚トラブルで別居中の夫婦であっても、婚姻費用分担は義務ですので、離婚トラブルや別居を理由に生活費を渡さないという行為は許されません。

離婚トラブルの際は、「夫婦関係調整の調停離婚調停円満調停)」と同時に、婚費分担の調停も進められることも多く、離婚が成立するまでは今までと同様に生活費を負担してもらう権利があります。
それでも支払わない場合は、最終的に財産分与の中から差し引くこともできます。家裁では、婚費分担と親権問題に関しては特に厳しい判断をします。女性と子供の人権を尊重するのです。

調停中や調停前に、夫が財産を隠したり、女性に渡してしまって、妻側に渡す生活費がないと主張されないように、財産の保全を求めて調停前の仮処分を申し立てることも可能です。これで夫が女に勝手に使うお金を一旦ストップすることができます(しかし、実際は調停前の仮処分は認められないことが多い。審判前・裁判前の保全処分であれば、凍結が可能)。

逆に言えば、離婚直前に夫婦の共有財産をあなたが隠すことも自分を不利にする行動です。もし、そのことが明るみになれば、違法性を追及される結果になります。銀行口座の動きを通帳記入するように家裁に言われたら逃げられませんよ。正々堂々と戦いましょう。

生活費を出してくれないからといって、あきらめたりせずに、家裁の強権発動を狙って、しっかり調停や審判を申し立てましょう。

生活費をもらう方法のご紹介でした。

 
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