Q10.親権者変更についての解説

夫婦トラブル解決のための法律Q&A

Q.10 「離婚後、夫に親権者変更を申し立てると言われました…」

離婚前の親権争いについては、前項の夫に親権を主張されます…」で概略を説明していますので、まずそちらをお読み下さい。ここでは「離婚後の問題」を扱います。
離婚前や離婚協議中に、配偶者に子どもを連れ去られたケースは大至急こちらの「子の引渡し審判と保全処分」をお読みください。

親権者変更の調停について

さて、離婚後に、親権者変更の調停を起こされることはよくあります。
これは元夫側の申し立てよりも、むしろ父親を親権者と定めた母親側がうつ状態での離婚後に思い直して申し立てることも多いのです。
もう一つのパターンとしては、母親を親権者に定めて離婚したものの、離婚後の養育環境が悪いという話を聞いて、父親があわてて親権変更を申し立てるというケースも目立ちます。

後者の話(妻の素行の悪さ)であれば、変更の申し立ては当然かと思いますが、その背景には母親側の不倫による離婚劇があり、結局恋愛に溺れて子供の面倒を見れなくなっているケースなのです。
こういった不倫がからむ場合には、不倫をした側に子供を養育させることに疑問が生じることもままあるものです(虐待につながる恐れがあります)。
離婚時に、しっかり見極めてから親権者を決定しましょう。

ただし、調停でも裁判でも、浮気と親権者の決定については直接関係がありません。浮気をしていることと、子供の世話をすることは全く別の問題です(配偶者の浮気が原因で子供の面倒を見ない場合は絶対に親権を渡さないでください)。
配偶者の浮気の報復で親権を取り上げようとする行為は子供のことを考えた行為ではないので、冷静になって、子供のためにはどの道が一番いいのかを考えてあげてください。

さて、前者の場合(母親側の親権者変更申し立て)の話ですが、これにも不倫がからんでいることも多いのです。

夫の度重なる不義理によって、夫からの心理的攻撃で追い詰められ、うつ状態になった奥さんが、精神的な不安から子供を間違って手放すこともよくあるのです。離婚後に、自分が悪かったのではないという事実にようやく目覚め、うつが解消し始めた途端に、子供を手放したことが間違いだったということに気づき、家裁に親権者変更を申し立てることがあるのです。

きっと経験がない方には「うつ状態とはいえ、子供を手放すだなんてそれはおかしい」とおっしゃる方もあると思いますが、うつというのは正常な判断ができないからこそ「うつ病」なのであり、精神的なストレスから脳内の信号が正しく送られない「障害(病気)」なのです。うつは、このように人から正常な判断を奪う重大な症状があります。うつを簡単に考えないでください。

さて、本題である「夫が親権者変更を…」ということに対する答えですが、男性に限らず、離婚の報復や子供に会えない寂しさから親権者変更を申し立てることもよくあることです。
ただ、離婚後の親権者変更は夫婦間の協議ではできません。

必ず家裁で「親権者変更の調停」が必要です。調停は話し合いに過ぎませんので、合意しなければ成立しません。調停で合意できなければ、ケースによっては審判に、ケースによっては審判が開かれずに裁判をする必要があります(子の養育に関する調停は乙類事件なので、基本的に審判に移行します)。まずは調停での話し合いからスタートです。

ただし、子どもに対する虐待など、早急に親権者を変更しなければならないと思われるケースに関しては、「親権者変更の審判」を申し立てることができます。
そして、そのような緊急の状況では、「親権者変更の審判」だけではなく、「子の監護者指定の審判」、「子の引渡しの審判」、「子の引渡しの仮処分(保全処分)」も合わせて申し立てることをおすすめします!

調停からの申し立ての場合、調停の申し立て費用は、印紙代や連絡用切手代、相手方の戸籍謄本などで2千円ほどです。調停は家裁の調停委員を挟んでの話し合いに過ぎませんので、弁護士も必要なく、ご自分で対応できます。しかし、相手方の虐待などが理由の場合、緊急性がありますので、最初から弁護士を入れることをオススメします。

家裁において親権者の変更が認められたら、審判の確定または調停成立の日から、10日以内に「審判書」または「調停調書の謄本」を市区町村役場の戸籍係に持参し、届け出ます。そうすると子供の戸籍の身分事項欄に変更の旨の記載がされます。

しかし、親権者変更は簡単に認められるものではありません。現在の養育者側に問題がなければ、変更する必要がないのですし、すでに安定している生活を変更するほどの理由があれば別ですが、そんなに重大な問題がなければ変更の必要がありません。
夫の方が収入があるので、親権を奪われないか心配する方多いですが、子供の幸せは金銭でだけ計るものではありません。基本は現状優先であり、金銭はほとんど考慮されません。不足している養育費は夫側が負担すれば良いだけの話です。

元夫の親権者変更の申し立てでは、ご自身(元妻)に虐待があるとか、ギャンブルにハマって生活に困窮しているとか、再婚相手が暴力を振るうなどの養育環境の悪化がないと、相手方からの親権者変更は難しいです。
そういった事実があるのであれば、ご自分が親権者として不適格といわざるを得ないので、むしろ速やかに親権者変更に応じてください。それがお子さんのためです。そういった事実がなければ、嫌がらせのような親権者変更の調停申し立てに負けずに家裁でしっかり主張し、絶対に親権を渡さないようにしてください。

夫婦のどちらの収入が多いかは関係なく、どちらが子供をより良く育てられるか、です。

男性であっても親権が取れないということはありませんが、元々育児に積極的な人でないと不利であることは確かです。そして、離婚後の親権者変更は、よほど元妻側に育児に対する不適切な事情がない限りは不可能に近いでしょう。
元妻に子供の虐待などがあれば、もちろん変更も可能です。

家裁で親権者変更の審判が行われ、変更が認められるというのは本当に問題がある場合だけです。そして、調停では中学生以下のお子さんに直接「父母のどちらがいいか?」と聞くことはありません(中学生以上は聴取がありますが、10歳以上くらいであると聞き取りがあるケースも最近は増えてきました)。あなたがしっかり子供への愛情を主張してください。

ご自分の愛情と養育環境に自信があるのなら、大丈夫です。元夫の親権者変更は認められないでしょう。余計な不安を持つことなく、しっかり主張していってください。

離婚後に相手方のもとで育っていた子どもが虐待の被害にあっている疑いがあるとか、養育状況が非常に悪いなどの事情があれば、男性や女性ということか関係ありませんので、「親権者変更の調停」ではなく、「親権者変更の審判」「子の引き渡し審判」「子の引き渡しの保全処分」「監護者指定の審判」を申し立ててください。のんびり調停をやっていたら、虐待にあっている子どもは救えませんよ!大至急の審判です!

離婚前に配偶者が勝手に子供を連れ去っているような危険なケースでは、至急取り戻さないといけませんので、当事務所の「子の連れ去りについて」で解説をしています。ぜひ、ご覧ください。


【親権者に関しての参考情報】

おそらく、皆さんには関係ないはずですが、親権者である父や母子供の間で紛議(利益相反行為)が生じるケースがあります。その場合、親権者はその子供のために「特別代理人の選任」を家裁に申し出なければなりません。
これは、同じ親権者の下にいる子供たち同士の紛議の際にも必要になります。

例えば、父が亡くなった際に、母と未成年の子供の間で遺産相続などでトラブルが発生する場合は、この制度を利用する必要が出てきます。
しかし、未成年者と争う親ということはめったにないでしょうし、通常は私たちの生活には関係ないものです。

 

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