Q14.裁判前の財産保全(仮処分)について

夫婦トラブル解決のための法律Q&A

Q.14 「離婚裁判開始の直前に夫に資産を隠されそうです…」

裁判や調停前に、夫側が財産分与をごまかしたい・離婚する妻にお金を渡したくない・お金を少しでも愛人との新生活に使いたい…と、預貯金を隠されてしまったり、別口座に移されたりということが発生します。
その心配がある場合には、弁護士さんに相談をしながら、財産保全の申し立てを行わなければなりません。

動産(預貯金、証券など)や不動産(自宅など)の保全(資産凍結)を裁判所が認めれば、資産は一旦凍結されて手が出せなくなります。しかし、保全には「担保(お金)」が必要になるケースが多く、この資金を準備しなければなりません(裁判終了後、返還されます)。ですので、この財産保全はある程度の資金のある方しかできない傾向にあります。

裁判所は、債権者に担保を立てさせて、又は担保を立てさせないで保全命令を発令することができます(民事保全法14条)が、仮差押えについては担保を立てさせるのが通例なんです。

担保というのは、虚偽の内容で裁判を起こす悪徳業者なども存在しますし、自分が敗訴する内容であるのに嫌がらせのように裁判を求める人もいるので、そういう場合に備えて一応担保を預けなければならないということです(不当な裁判だった場合は逆に担保が損害賠償金に当てられるということです)。

通常、動産(動産の占有移転禁止の仮処分 )に対しては1~3割、不動産(不動産の処分禁止仮処分)に対しては固定資産評価額の2割程度の担保が取られます(これはあくまで弊社が経験した一般的な例です)。1千万の預貯金なら100万円以上、時価2500万の家屋敷なら500万円を用意しなければならないということになります。
これでは、お金がない奥様などは申し立てることが難しいかと思いますが、全部に保全処分をかけなくてもいいですし、これは裁判所の判断にもよるので、あきらめずに弁護士さんに相談をしながら、できる範囲で実行しましょう。

勝訴の見込みがあれば、親兄弟に借りてもメリットがある場合もありますし、弁護士さんとしっかり話し合いながら進めてください。できれば、財産すべてに保全をかけないと後の祭りになりますので、特に夫の財産額が大きく、愛人につぎ込みそうなケースでは必ずやっておきたいです。
ういったケースでは、資産凍結される前に夫がその不動産を担保に借金などをしていることがあり、差押さえや凍結の障害となったりすることもあります。配偶者の動きに注意してください。

ちなみに、反対に財産を隠したいという方は、あきらめた方がいいです。
銀行に取引記録の開示や単純に通帳記帳をされて確認を取られたら、お金を下ろして何かに使ったことはすぐに判明します。そうなれば、財産隠匿などを問われて、調停や裁判で非常に不利になりますし、財産分与からあなたの取り分を考慮される結果となります。おかしな小細工はせずに堂々と争いましょう。

強制執行、財産開示請求などの情報は、Q8「強制執行について」をご覧ください。