Q18.不倫関係にある男女の婚約不履行について

夫婦トラブル解決のための法律Q&A

Q.18 「彼氏とは不倫関係にありますが一方的に婚約を破棄されました…」

不倫の状況下にありながら、男性から「妻と別れて、お前と結婚する」と言われ続け、不倫関係を継続しながらも、結局のところ男性から「やっぱり家に戻るから結婚できない」と言われるケースは少なくありません。
このような女性がよくやるのは、ネットや弁護士に対して、「婚約破棄の慰謝料請求をしたい」という相談を寄せるというものです。

残念ながら、結婚の約束をしていたとしても、その婚約自体が不法行為下での契約であり、公序良俗に反する契約として、完全に無効です。

無効であるから、婚約自体が成立していませんし、その契約不履行による損害賠償請求も認められません。不倫下にある人間を法律は一切救ってはくれないのです。

きっとこういう女性は納得できないでしょうけど、では、例え話をしましょう。
二人組の泥棒がいます。主犯の泥棒は、盗んだお金の半分を分け前としてお前にやると説明していたのに、いざ強盗を行ってみたら、半分どころか5分の1ほどしかくれなかったとします。
強盗を持ちかけられた方の泥棒は、「契約通りに分け前をくれなかったから、損害賠償請求する!警察に行く!」と主張できますか?無理ですよね?
強盗をしたお金自体が不法収益であり、不法行為下での契約自体が無効です。法律は法律を遵守する者にしか、その利益を与えないのです。

だまされた…とお思いでしょうけど、確かに言葉の上ではだまされたということになりますが、法律下ではだまされているのではなく、その男の妻に対する不法行為を行っているということで、あなたが犯罪者みたいなものなのです。犯罪者はその利益を主張することはできません。

ただ、過去の判例において、ごくわずかですが、慰謝料が認められたケースがあります。

それは、女性が恋愛に未熟とされる未成年であり、会社の上司に言い寄られて関係を結んでしまい、上司から「お前と結婚するから」と言われて、それを信じて不倫関係を継続する状態となり、結果的に「だまされた」ケースです。
これは、男女関係のみではなく、会社の上下関係も利用した肉体関係であったために認められたもので、このような状況でもなければ通常は認められません。

それから、男性に妻子がいることを言われておらず、完全にだまされていたものは慰謝料請求が可能だと思いますが、薄々気づいていたりするケースも適用は不可です。

知っていたのに知らなかったというウソも最終的には通りませんのでご注意を(トラブルになっている男性があなたに都合のいい主張はせずに、過去に説明していた状況を証言するからです)。そうなれば、いくら「すでに婚姻破綻していたではないか」と追及しても、離婚せずに同居していた事実などから、婚姻破綻と認められることもまずありません。

それから、もし妊娠していた場合は、「子の認知」「養育費」を求めることは可能です。

相手が認知しないと言っても、肉体関係の時期の証明や最近はDNA鑑定というものもあるので、家裁に「強制認知」の申し立てもすることができ、事実上認知から男性は逃れることはできません。しかも、認知の事実は戸籍謄本に記載されますので、家族に隠すこともできません。

拒否しても家裁から強制認知されれば、父子関係が成立しますから、養育費支払いの義務もできます。これを家裁で確定すれば、支払いが滞った場合は強制執行を申し立てられ、給料からの天引きが実行されます。

そして、妊娠してから、その子供を産むかどうかは女性に決定権があり、女性が産んだ場合は男性は各種の支払いから逃れる術はありません。これは、子供の権利であるので、不法行為を行っている女性側の権利ではないからです。

ただ、時には残念ながら胎児を堕胎するということもあるかと思いますが、堕胎費用や入院費用の少なくとも半分は請求可能かと思いますが、その間の生活費の保証などはほとんど請求することはできません。
請求してもかまいませんが、支払いをしてくれるかどうかは、そのことを「口封じ」に利用したいと思う男性側の妥協により、任意で支払いをしてくれる場合に限られる状況です(解決金という名目など)。男性が「オオゴトにならないうちに、ある程度支払って終わりにしたい」と思うなら、少なくとも半分、もしくはそれ以上の支払いをすることによって解決するということはよくあることです。しかしながら、それを法的に強制することは難しいのが現状です。

このような女性は、家族や強面の知人男性を担ぎ出し、金銭の要求をするケースも目立ちます(結局はそういう人間たちなんですよね…)が、その行為はれっきとした「脅迫」、「恐喝」に当たりますので、男性は刑事事件として警察に届けるべきです。
妊娠は双方の責任であり、女性にはそれを断ることもできたわけです。しかも、双方が合意の上での不倫関係ですので、不法行為下では自分を救う法律はほとんどないということを肝に銘じるべきですね。

このような不誠実な男性を罰する法律もないということになりますが、残念ながらそのような男性を選んだのも自分ということです。結婚してからの不法行為に対しては各種の請求が可能ですが、不法行為下の人間は誰も守ってくれるわけではないのです。