Q20.未成年後見人選任について

夫婦トラブル解決のための法律Q&A

Q.20 「もしも私が死んだら元夫に子供の親権が渡りますか?」

あまり人が亡くなることを前提のお話をするのは寂しい思いがしますが、離婚後の親権の行方について知っておきたいということも大事なことです。

心配しないでください。大丈夫です。

…と言っても、もしあなたが亡くなって、ご両親が何もせずにそのままお孫さんを育てていれば、元夫に親権者変更がされる場合もありますので、ご注意ください。

こういったケースで必要になるのは、未成年後見人選任(みせいねん-こうけんにん-せんにん)という制度です。

親権者が亡くなった場合に、その未成年を育てる権利を次に有するのは、ほとんどのケースであなたのご両親(祖父母)か兄弟になるかと思います。もちろん、離婚したとはいえ、元夫も親権を求めればその権利があります。
離婚はしていても夫が子供の良き父親である場合は、元夫が引き取って育てることがいいと思います。

しかし、離婚しているということは、何らかのトラブルがあった可能性もありますし、元夫が親権者として相応しくないケースも多いので、そういった心配になるのだと思います。

そこで、あなたに万が一のことがあった場合、元夫ではなく、あなたのご両親に子供たちを見てもらいたいと思った時は、「未成年後見人選任」制度を利用しましょう。
この制度は親権者が亡くなったときに、その未成年を育てる監護者(後見人)を家裁に届出て、選任してもらう制度なのですが、事前に遺言状により、生前からその選任をすることができます。

未成年者は、自分で財産の管理や各種の契約をすることはできないので、そういった親権者に代わる人が絶対に必要になります(施設入所している場合は、施設長などが代行します)。また、当然のことながら、成人に世話をしてもらわないと生活することもできません。この未成年の権利保護のために働くのが「未成年後見人」です。

まずは、あなたが亡くなる前に、ご両親のどちらか一人を「未成年後見人」に選任する遺言状を作成してください。もし、あなたがまだ生前中に、残念ながら指定した両親の一方が亡くなることがあれば、すぐにもう一方の親御さんを指定し直してください。
遺言状は自分で作成したものでも大丈夫ですが(自筆遺言状)、所定の書式がありますので、本で勉強したり、行政書士さんなどに依頼したり、公証人役場で公証人さんに作成してもらったりと(公正証書遺言状)、法的に有効な遺言状を作成してください。

なお、自筆遺言状の場合は、あなたが亡くなった場合に家裁で検認を受けなければなりません。それまでに開封していれば無効となります。修正したければ、一旦破棄して、新しい遺言状の作成が必要です。
ただし、公正証書遺言状は検認の必要がありません(公正証書遺言は、公証人役場に知人などの証人を一人連れていかなければなりません。当事者の親御さんはダメです。自分の印鑑証明・印鑑、証人の住民票、証書の作成費用などが必要になります。証人は行政書士さんや弁護士さんも可能です)。

あなたのご両親が家裁にこの遺言状を元に、「未成年後見人選任」の申し立てをすることによって、子供の後見人となり、育てていける権利が確定します。
家裁への申し立てにより後見人が確定したら、今度は後見人側もしくは子供側の市町村役場に「未成年後見開始届」を提出するという手順です(必要なもの:後見人の印鑑・後見人選任の審判書謄本など)。

ちなみに、この後見人を指定する時に、後見人が一人でその責を追うことに問題がある場合(子供とその遺産などをめぐって親族間などで争いごとなどが起こりそうな場合などに後見人を一人にすることに異議がある親族がいることもある…)、さらに「未成年後見監督人」も合わせて指定することができます。
この監督人は、後見人に指定した方の配偶者や直系血族・兄弟などは指定できません。別の親族などがその任を得ます。

もしも、元夫があなたが亡くなったことを知り、あわてて親権者変更の審判を申し立てたとしても、遺言と選任の申し立てにより、認められることは少ないと思います。
ただ、基本的に現状優先であっても、ご両親が病気がちで実質面倒が見られないという場合などは、家裁の調査を受けて審判で争うこととなります。そういった特段不利な状況でない限り、現状優先ですので心配することはありません。

これが例えば、あなたが遺言状を残さずに亡くなってしまった場合でも、ご両親が「未成年後見人選任」の届出をあなたが亡くなって10日以内に行えば大丈夫です。でも、あなたが亡くなった時にご両親がすぐにそんな制度があることを知らない場合もありますので、やはり生前に未成年後見人選任だけで構いませんから、遺言状を作成しておくべきです。

あなたが亡くなったことを元夫がすぐに知りうる立場にあり、ご両親よりも早く親権者変更の審判を申し立ててしまうと、審判で争うこととなります。
しかし、元夫が長年養育費も支払っていないとか、子供とも面会していないとか、子供自身も望んでいない場合は、現状優先の原則でご両親に選任が認められます。
子供にとっては長年会ったこともないような実父と暮らすことに不安もあるでしょうから、現状優先となるはずです。

では、長年ではなく、ごく最近まで元夫と一緒に生活していたケースはどうなるかというと、上記で説明の通り、審判で争うことになります。
ただ、これも元夫が親権を主張した場合です。元夫と連絡が取れないような状況であれば、元夫も気づかないでしょうから、そのままになるかと思います。そうなれば、ご両親による未成年後見人のまま、子育てができるでしょう

ただ、ご両親が「未成年後見人」になれば、それで終わりではありません。
まず、未成年後見人になった人は、未成年者の財産の調査をして、1か月以内に財産目録を作成し、毎年支出すべき金額の予定を立てる必要があります。未成年者が成年に達するまでずっと身上監護と財産管理を行うというわけです。
未成年者が成人になれば後見人が終了ですから、そうなれば2ヶ月以内に財産管理の最終計算を行い、成年となった未成年者自身に管理を引き継ぎます。管理渡しから10日以内に後見人から役所に後見終了の届出を行い、その役目を終えます。

まずは遺言状を作成しておいてください。そうすれば、安心してもいいでしょう。


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