Q1.離婚届の不受理について

夫婦トラブル解決のための法律Q&A

Q.01 「離婚届を勝手に出されそうで怖いんです…」

離婚届は、必ず夫婦双方が実際に署名・捺印したものしか提出することはできません。
相手方の名前を勝手に書いて提出することは、有印私文書偽造・同行使という罪であり、戸籍に虚偽の記載をさせているということで公正証書原本不実記載等の罪(公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処す)になります。

しかし、相手方が虚偽であっても、その離婚届に署名・捺印(子供がいれば親権者の記載も)があれば、役場では署名者に対する本人確認をすることはできず、そのまま受理してしまいます。

では、これをどうやって阻止するかというと、まだ提出されていない離婚届を事前にストップするために、「離婚届の不受理(離婚届不受理申請)」という手続きが利用できます。
不受理の手続きは、各市区町村役場の窓口において、必要書類を受け取り、本人が必要事項を記入して提出すれば良いだけです。

基本的には本籍地の役場に提出ということになるのですが、現居住地の役場にも提出が可能です。
しかし、現居住地での提出の際は、実際には本籍地の役場への転送措置が取られることになりますのでタイムラグが生じる場合があります。
夫が何をするかわからないような人格の人の場合には、離婚がちらつく前から届出することができます。離婚届を書いたりするような状況の前から提出できますので、その危険性がある方はぜひ御一考を。

この不受理申請は、2008年5月までは6ヶ月間有効となっていましたが、現在は無期限となっていますので、わざわざ半年ごとに更新する必要がなくなりました。
しかし、それ以前に提出されているものは現在も更新が必要となりますので、以前の届出をしている方はすぐに役所で新しい不受理の手続きを行ってください。そうすれば、無期限に切り替わります。

しかし、以前は役所によっては「不受理申請」がされていることに気づかずにそのまま離婚届を受け取ってしまうケースもまれに見受けられましたが、コンピュータ処理される現代ではまず起こりえませんが、本当に勝手に離婚届を出すような配偶者であれば申請後も時々は自分の戸籍謄本を確認した方が無難です。

特に危険な配偶者は戸籍の転籍などを重ね、不受理申請の記載が漏れるチャンスを狙い、離婚届を出すケースもあります。
これは、現代ではよほど役所の担当者による不手際がなければめったに起こりえないケースなのですが、用心しなければなりません。当然、自分が書いた離婚届でなければ、以下の方法によって訂正も可能です。

残念ながら、すでに離婚届が提出されている場合は、家裁に「離婚無効の調停」を起こすことになります。
これは、実際に本人が署名・捺印している場合は離婚に同意していたと見て、厳しい結果になります。
ただ、相手方が、勝手にあなたの分の署名・捺印した場合は、筆跡も違いますので覆すことも可能かと思います。
調停において、離婚無効の調停調書が作成されれば、その文書を持って役場に行けば、戸籍の訂正が行われます。

調停で相手方が拒否した場合は、裁判をするしか方法はなく、筆跡鑑定などの証拠の提出が必要になってきます。
くれぐれも、本心から迷いなく離婚する場合を除いて、署名・捺印済みの離婚届を相手方に預けるようなことはしないでください。
離婚はゆっくり考えながら進めるものです。自分が納得いくまでしっかり時間をかけましょう。急いで決めることに何もメリットはありません。

もし、離婚届を精神的混乱の中や暴力によって強引に書かされたりしているケースだったとしても、離婚届無効の申し立てを行うことができます。
これは離婚後3ヶ月以内に申し立てなければなりません。常日頃の勉強がなければ、こういうトラブルを回避することは難しいですね。