Q19.借金ばかりの夫から養育費を取る方法
夫婦トラブル解決のための法律Q&A
Q.18「借金ばかりでお金のない夫からどうしても養育費をもらいたい」(お金のない夫・無職の夫から養育費・慰謝料をもらう方法)
夫の不貞行為を主原因とする離婚の場合、そういう夫は長年消費者金融に借金があるケースが多く、財産もないので取るものが取れずに終わるということがよくあります。法律相談をしても、ネットをあちこち検索してみても「無い袖は振れない」という結論に至っていることが多いものです。
しかし、消費者金融に多額の借金がある夫には本当にお金がないのでしょうか?
普通に考えればありませんよね…。借金がある夫からは養育費を取れないのでしょうか…。
いえいえ!ちょっとお待ち下さい!
あなたの夫(or元夫)が長年に渡って消費者金融(or信販会社)に借金があった場合、結果的に夫は自分でも知らずにけっこうな財産を持っていることに気づいてください!
それは、法律事務所のテレビCMでもよく流れていますし、ネットや雑誌の広告でもよく見る機会があると思う「過払い金返還請求」です。
●過払い金とは?
消費者金融は、貸金の利息を「利息制限法」という法律の規制の上限を無視して貸していました。
「利息制限法」では、元金10万円以上100万円以内の貸金には利息は18%を上限としていますが、勝手にもう一つの法律である「出資法」の上限である29.2%を採用していたのです。
それはなぜかというと、「利息制限法」には事実上罰則がなく、闇金や高利貸しを排除するための「出資法」には刑事罰が科されていたために、刑事罰だけを回避して、「利息制限法」を無視するという暴挙を行っていたのです。業者は怖いですね…。
この18%と29.2%の差がグレーゾーンと言われるものであり、正確に法律を適用した場合、18%以上の利息は無効となり、その超過分を今まで支払っていた人に返金をしなければならないのです。その払い過ぎていた超過分が「過払い金(かばらいきん)」です。現在では、このグレーゾーンが許されなくなり、消費者金融や信販会社は上限を18%に修正していますので、平成19年の秋頃より前のグレーゾーン分の請求となります。
ただ、この過払い金は黙っていても返ってくるわけではありません。自分、もしくは弁護士から返還請求をしないと返してくれないのです。しかも、過払い金を請求すると業者には当然ですが記録が残り、その業者からは二度と借金をすることができません。金融業者のささやかな仕返しというわけです。でも、二度と消費者金融から借金をしないという人であれば、気にすることはありません。
特に、すでに借金を返し終えているケースでは、信用機関への登録もされませんので安心と言えるでしょう。
消費者金融に借金がある人というのは、だいたい50万円以上300万円での範囲で借金があるケースが多いです。このような額を5年以上に渡って返していた場合、ほとんどのケースで結構な過払い金が発生していて、残りの借金が消えるケースもあります(借金額と期間によって全然違いますので、要注意)。
10年に渡って借金があった場合は、びっくりするくらいの額の過払い金が貯まっています!人によっては、300万円も返金されたというケースもあるくらいです。
つまり、もうお気づきでしょうか?
そうです。長年の借金苦の夫であればあるほど、過払い金が発生しているので、夫に過払い金返還請求をさせて、そこから慰謝料や養育費の一括請求、解決金を回収すれば良いのです。
過払い金返還請求に必要な弁護士の着手金は、だいたい10~30万円です(1社につき3~5万円を数社分ですが、取れた分からの成功報酬が後からかかる)。その費用で、100万円が返ってきたらラッキーです。
借金をしている人間というのは、面倒くさいことから逃げる癖がありますので、過払い金返還請求をするように言っても動かないことがほとんどです。ましてや、離婚後であれば無視して動きません。
であれば、まずは夫と家裁の調停か公証人役場での公正証書によって、養育費か慰謝料請求の債務名義を確定します(すでに持っている方はOK!)。もしくは、お金を貸していたという人であれば、「貸金返還請求訴訟」を起し、債務名義を取得することです(訴訟といっても、本で勉強しながら自分で起こすことができます)。
その後、自分でも構いませんし、弁護士からでも良いので、「慰謝料請求に係る債権譲渡の契約」を夫と行い、過払い金返還請求の代理人となって、夫に代わり消費者金融に請求すれば良いのです。
夫は、消費者金融に対して、「妻への過払い金返還請求の債権譲渡を行った」という通知を送ります。これで弁護士などから返金手続きを行い、あとは過払い金が返金されてくるのを待つだけです(まぁ、この手法はかなり強引な方法論ですので、ほぼ間違いなく訴訟となるでしょうけど、最近の過払い金請求もその多くは訴訟となりますので同じです)。
場合によっては、債務名義のみでも回収に入れます。これは弁護士さんの技量しだいといったところでしょうか。どうせ自分では何もするつもりがなかった夫ですから、その契約書にサインをするだけで妻からの執拗な慰謝料請求がなくなると聞けば、応じてくれることもあるのです。
ただ、過払い金の債権譲渡は「公序良俗に反する契約」と見なして、弁護士によっては受けてくださらない場合があります。過払い金請求を積極的に行っている法律事務所に依頼することが必要になるかもしれませんね。
それから、離婚協議(or離婚訴訟など)自体を弁護士に依頼していた場合で、夫側の過払い金返還請求も同じ弁護士に依頼することはできない場合もあります。双方代理と言って、利害関係にある双方の依頼を受けてはいけないのです。これは弁護士法で規制されている行為に当たります。
その場合は、夫の過払い金請求は夫自らがやるか、債務名義を取得したあとに夫を介さずに直接消費者金融に請求する形を取れば、弁護士さんも利害関係にある双方の代理ということになりません。
借金ばかりの夫で財産はなくても、過払い金を持っている可能性は高いです。泣き寝入りせずにぜひ、実行しましょう。