Q9.親権についての解説(親権争い)
夫婦トラブル解決のための法律Q&A
Q.09 「浮気をした夫が離婚協議の際に親権を主張します…」
離婚トラブルで大きな問題になるのが、この親権問題です。親権争いがあれば、ほぼ確実に家裁での調停しか解決策はないかと思います。
ただ、ほとんどのケースで男性側があきらめることが多いので、親権者は母親になることがほとんどです。特に子供が就学前であれば、調停などをしても母親が有利です。
男性の場合は、かなり難しいですが、「男性だから親権は無理」ということではありません。子供のためになるのであれば、男性でも親権を取れます。7歳未満であれば難しいケースも多いですが、小学生以上であれば男性でも親権を取れている方が増えています。
しかし、妻に落ち度がないと難しいのが現状です。妻の浮気の証拠などがあれば、攻め方ひとつで男性も簡単にことを運べます。
浮気夫は慰謝料や養育費を払いたくないばかりに、親権を主張してあなたに嫌がらせをして、あなたが「じゃあ、養育費もいらないから親権だけはちょうだい!」と逆切れするのを狙っていることも多いものです。そんな主張に付き合う必要はありません。
しかし、家裁では、親の思いとはまた別の判断基準もあり、母親に生活能力がない、就労意思が全くない、病気がちである、子供が望んでいない、暴力がある、子供の面倒を見ない、などの不適格事項があれば、父親に決まることもあります。これはよほどの事由がないといけませんので、ほとんどの母親はこれには該当しないかと思いますので、女性は不必要に怖がる必要はありません。
ただ、できれば、監護補助者(子供の世話を手伝うあなたのご両親など)が近くにいて、働き始めて収入があり、子供も安定して生活している状態を一日でも早く整えて準備することも大事ですね。
相談中にたまにあるのが、子供が小さくて働きに出られないと言う方がいることですが、これは理由になりません。世の中には、未満児の子供を保育所に預けて働いている女性も多くいらっしゃいますし、そのような共稼ぎのご夫婦もたくさんいらっしゃいます。子供をタテにするような言い訳をされる方は本当の養育の意思が薄いとして、父親側が家事もできて収入もあり、監護補助者もしっかりしているなどの好条件が揃えば、女性とはいえ調停の際には不利になることもあります。
ここを間違わないでください。母親が仕事をしていないことが問題になるのではありません。子供のための実効行為をどれだけ行って、子供のことをどれだけ真剣に考えているかということが考慮されるということです。離婚後の生活費が足りないということであれば、その分養育費をもらえば良いのです。養育費とはそのためにあるものです。
子育ては女性の特権ではありませんので、できる父親であれば養育に問題がないわけです。だからこそ、自分自身がしっかり養育の意思をもって、本気で親権を争うべきです。
それは男性にも言えます。自分が本当に親権を取りたいなら、それなりの準備をし、的確に争うことです。「裁判所は女性が有利だー」とか言い訳めいた言葉でごまかさずに有能な弁護士と戦略的に戦うことです。
親権を争う際に考慮されるのは、
「子供への愛情」、「養育の意思」、「経済状態」、「親の監護能力」、「子供の心身の健全性を育てることに適しているか」 、「監護補助者(あなたのご両親など)の養育補助度合い・居住環境・財産」、「家庭環境」、「教育環境」、「居住環境」などです。一番はやはり何と言っても「愛情」です!
一度子供を手放せば、親権者を変更することは難しいです。しっかり準備をして、取り組みましょう。家事がよくできて、子育ても完璧だという男性はまだまだ多くありませんので、ほとんどのケースで女性が有利になっていますね。
ただ、夫が浮気をした…、妻が浮気をした…ということは親権にはあまり関係はありません。心情的には浮気をして離婚を申し出た側に肩入れをしたくはありませんが、その浮気と子供の養育の件は別問題なのです。浮気三昧で子供の養育を放棄しているような母親であれば、もちろん親権争いに大きな影響はあります。
子供が大きければ、自分の意思がありますので、子供の意思が尊重されることがありますが、これも中学生以上の年齢の子供でなければ、まず直接聞き取りはされませんので、子供が小さければあまり心配される必要はないでしょう(場合によっては、10歳くらいから聴取を行う家裁も増えてきています)。
ネットの相談でもたまに女性に聞かれるのですが、子供が3歳など小さいのに、「調停で子供が父親の方がいい、と言わないか不安なんです!」と言い切る方もおられます。調停で、そんな小さい子供に調停委員や家裁調査官が聞き取りするケースはありません。あくまで、夫婦どちらがその子供の養育に向いているかが試されます。ご自身の子育て、夫婦の子育てを客観的に見て、自信があれば何も不安に思わずにしっかり冷静に主張すれば良いのです。不安な方は「不安な要素がある」ということなんだと思います。
主張を捕捉する陳述書の提出
そのためには、自分側がしっかりと養育のための準備を整えているという主張を丁寧にやればいいんです。相手がいかに悪い人間なのかだけを主張すれば、あなたの性格も疑われて良い印象を与えることができません。相手を口汚くののしるのは逆効果です。そのために必要なのは、自分側の準備が進んでいることを説明できる陳述書(ちんじゅつしょ)を提出することです。
監護補助者(両親や兄弟)から養育の手伝いの意思を示す陳述書(陳述書というタイトルだけ書いてもらって、内容は普通のお手紙みたいなものでいいんです。祖父母が出来る限り一生懸命手伝います…という思いを普通に書いてもらうだけです)を書いてもらったり、実家に戻るのであれば、実家の外観や子供部屋になる予定の部屋などの写真を添付したり、行く予定の保育所の写真を添付したり、孫と遊ぶ祖父母の写真や自分と遊ぶ子供との写真の添付(1~2枚で充分です)などを用意してください。
自分の方がしっかり準備していますという証明をすることは簡単なわけですから、その説明のための準備をしっかりやれば良いだけです。陳述書は必ずしもパソコンで作らなくても、A4レポート用紙での手書きでもいいんです。写真も紙に手貼りでいいんです。気持ちが伝わるように頑張るだけですから、難しく考えずに!
収入に不安があるのであれば、夫からの養育費をしっかりもらえばいいのですし、その部分の話し合いも含めて、安易に協議離婚せずに、家裁の調停を利用しましょう。解決に1年2年かかってもいいと思わなければ、本当の解決には至らないことが多いものです。調停で、相手方を罵倒したり、冷静になれずにわめいて主張したりすると逆効果ですので、調停委員さんにしっかりあなたの人間性が伝わるように落ち着いて話をしてください。
そもそも、親権者とは、子供の「身上監護権」と「財産管理権」を持つ人のことを言います。身上監護権は子供の実際の養育を行う行為で、財産管理権はその名の通り財産等法律行為に関する管理を行うことです。親権者といえば、その両方を持つ人のことですが、この2つの権利を分離することも可能です。
父親が親権を主張して譲らない場合は、親権(財産管理権)だけを渡し、身上監護権だけを自分が取ることも可能です。
つまり、子供の権利を管理するのは父親、実際に育てるのは母親ということもできるというわけです。よく、この解説があちこちの探偵サイトや離婚サイトにも紹介されていますが、安易に親権を渡し、実を取るということは一歩間違えば、新たなトラブルの元になることがあります。弊社の経験上、安易に親権を分けずにしっかり自分が親権者(財産管理権と身上監護権の両方を持つ)になることだけを考えたほうが得策だと思います!
親権部分を相手方に渡してしまえば、自分の再婚の障害になったり(子供の籍の移動に親権者の許可が必要になるため)、引越しや進学先の問題に親権を持つ夫の介入を許すことになりかねません。しっかり親権を主張していきましょう。弁護士さんや他社の探偵、離婚専門家でも、分けることができるという主張をされる方がいますが、ご自分のお子さんのことであったら、親権を渡して養育権を取ることだけで納得できるでしょうか?知識として知っておくことは大事ですが…
時間がかかっても、あなたの希望を通せるように慌てずに冷静に調停を利用しましょう。そして、親権問題で裁判の経験がある当事務所の相談員にいろいろと相談してみましょう。
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